冬の早朝の厳島神社 広島の風景
冬の早朝の厳島神社 広島の風景 広島県廿日市市
一月の中旬の或る日の朝早く、まだ周囲が暗い中をホテルから外に出て、一人神社のほうに歩き始めました。
昼間は人で賑わっていた海岸沿いの道も、時間が早いためか、まだまだあたりが暗いためか、歩いている人は一人もおらず、とてもひっそりとしています。
耳に届くのは波の音と風の音。普段の日常生活から考えたら、あり得ないほどに人工音が一切ない静謐な時間。
空が少しずつ少しずつ白んでいくのを前方に眺めながら、のんびりと歩くとやがて神社の入口にたどり着きました。そう、世界遺産としても知られる「厳島神社」の入口です。
右手の方には今や世界的にも有名な「鳥居」が、海の中から突き出すような格好で沖合の場所に静かに立っていて、左手の方にはぼんやりと光を放つ赤と白の建物が、これまた海の上に立つような格好でそこに存在していました。
その向こうには山が連なっていて、左手奥が東側に当たるのでしょうか、空は見る見る間に白み始め、一刻一刻と明るくなっていきます。
深呼吸をすれば、肺の中にまですーっと入ってくる清らかな空気。音もなく静かに明るくなっていく空の美しさ。
そんなものに全身包まれながら、しばらくそこに立っていました。
修学旅行ではじめて広島を訪れて以来、何度もこの地にやってきて色々な風景に巡り合ってきましたが、この冬の早朝の風景ほどに清らかで静かで美しい風景を知りませんでした。
廻りには人が誰もおらず、この絶景をただ独り占めにしているような特別な感じも、その美しさに拍車をかけたのかもしれません。
とにもかくにも、それはため息が出てしまうような、とても美しい光景でした。その景色を瞼に焼き付けながら、再び歩き始めました。ものの数分の間に、空は明るくなっていました。