潮だまりのタテハモドキ 沖縄の風景

潮だまりのタテハモドキ 沖縄の風景潮だまりのタテハモドキ 沖縄の風景 沖縄県国頭郡恩納村真栄田

那覇空港から沖縄自動車道・石川ICを経由して約50キロメートル、車で約1時間、沖縄本島の中ほどに位置する恩納村にある「真栄田岬」は、スキューバダイビングやシュノーケルを楽しめる場所として知られています。海の水が美しいのはもちろんのこと、「青の洞窟」と呼ばれるダイビングスポットがあり、その幻想的な光景を求めて多くのダイバーが訪れるのです。そんな「真栄田岬」は、かつてサンゴ礁であった地域の地盤が隆起することにより出来上がった「隆起サンゴ礁」の地形が広がっていますが、そんな真栄田岬の海岸を散策している時、ふと目をやると潮だまりに何かオレンジ色のものがあるのに気が付きました。

近づいてよく見てみると、それは蝶。波々の筋模様と目玉のような丸くて大きな模様が入ったタテハモドキでした。水の上に頭を出した石の上にちょんと座って休んでいるのか、水を舐めているのか、静かにじっとしています。昆虫のことには全く詳しくないので、海で蝶を見かけることが珍しいことなのか、いたって普通のことなのかはわかりませんが、過去の記憶を手繰り寄せても初めて潮だまりで蝶を見かけたような気がします。

以前、白神山地を訪れた時、「暗門の滝」のそばの清らかな水辺にちょんちょんとやってきているオオムラサキを見かけ、そのあまりの美しい色と大きさに感動しましたが、蝶が淡水にやってくるのはごく自然のことだと思ったのでその時は特に何も感じませんでしたが、今目の前にいるタテハモドキは明らかに海水のそば(の中の石の上)にいます。休んでいるだけならいいのですが、もし海水を舐めているのだとすると、あとで喉が渇いてしまうのではないかと心配になってしまいます。そもそも、「海の水で羽がべたべたになって飛べなくなってしまわないのかな?」「触覚が塩水で濡れたら、感覚がくるってしまわないのかな?」なんてことまで気になります。

そんなこちらの心配をよそに、しばらく石の上に止まっていたタテハモドキは、少しするとひらひらと飛んでいってしまいました。

帰ってから調べてみると、蝶の中には海を渡る蝶もいて、「アサギマダラ」などはおよそ2000キロメートルもの長い旅をするのだとか。海の上を飛んでわたるだなんて、もし疲れたらどうするの?と思えば、なんと海の水の上で休むとのこと。いくら体が軽いからといって海の水の上で休むなんて芸当ができてしまうのですね。地図も持たず、誰に教わるでもなく2千キロメートルも海の上を飛び、疲れたら海面上で休むこともできてしまう。そう考えると、タテハモドキにとっても、潮だまりで休むことなど、なんということもない、日常の風景だったのかもしれません。

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