国指定重要文化財 中村家住宅 沖縄の風景
沖縄の伝統風景 国指定重要文化財「中村家住宅」 沖縄の風景
柱も壁も扉も木造で、障子もはまっているため、どこか懐かしい感じがしながらも、随所に異国的な雰囲気も漂う伝統的な古民家。それもそのはず、世界遺産「中城城跡」のすぐそばに位置するこちらの「中村家住宅」は、十八世紀の半ば頃に築かれたという、琉球王国の建築様式を今に伝える沖縄の貴重な伝統家屋なのです。
室町時代の建築様式に、琉球王国が交易などを行い、文化的に影響を受けていた当時の中国の建築様式が融合した建築物で、反りのある屋根のデザインや瓦の形状、風水を意識して作られているという石垣や階段など、建物と敷地のそこかしこに、琉球の伝統的な文化、風習、習慣、意匠などが垣間見える貴重な史跡なのです。
この「中村家住宅」を訪問した時には、ちょうどお昼過ぎだったせいか、ほかに訪問客がいなかったこともあり、とても静かでゆったりとした落ち着いた時間が流れていました。
東京出身の筆者は、沖縄や九州など、東京から見て西や南にあたる地域を訪れると、食事や言葉、そのほかの様々なことに文化的な相違を感じて、驚いたり、感心したり、興味を抱いたりしますが、相違を感じる一方で不思議な親近感と懐かしさを抱く時もあって、狭い範囲で見た時には差異はいくつもあるものの、大きな範囲で見た時にはやはり同じ文化圏なのだなと改めて感じ入ったりもするのです。こちらの中村家に滞在していた小一時間ほどの間も、そんな感覚を抱いていました。
素晴らしく居心地の良い空間。慣れ親しんでいる様な雰囲気と今迄に出会ったことのない雰囲気が同居している不思議で面白い感覚。暖かな日差しを浴びながら板の間に静かに座って外を眺めていると、時間の観念が知らず知らずのうちに変わっていっているようで、充足感に満ちたひと時でした。