夕暮れの奥吉野 奈良の風景

夕暮れの吉野の絶景 奈良の風景
夕暮れの奥吉野の幻想風景 奈良の風景 奈良県吉野郡吉野町吉野山

大自然は時折、とてつもなく素晴らしい絶景、幻想的な風景を見せてくれる時があります。「景色」という意味では「抜けるような青空」や「空一面の夕焼け」、「瞬くような星空」といった、或る意味偏りのない、純粋で真っすぐで「透明感」のある風景も素敵ですが、積乱雲のような湧き上がる雲であったり、整然と並ぶいわし雲(うろこ雲・羊雲)であったり、切れ目から差し込んでくる光とその周りの分厚い雲であったりと、何かと邪魔者扱いされがちな「雲」の存在こそが、空や景色をよりダイナミックに、ドラマティックに、時に幻想的に見せてくれると思うのです。

個人的にも過去を振り返ってみると、雪が降っている日本海で次第に雲が晴れ、周囲は雪が舞っているのに雲の切れ目から幾筋かの光が差し込んできた時であったり、富士山の五合目から夕日に照らされる雲海を見た時であったりと、記憶に残っている素晴らしい景色、何年も経った今でもまざまざと思いだせる絶景は、いずれも「雲」の存在が大きかった気がするのです。

とても寒い日に、奈良県の奥吉野で遭遇した夕暮れ時の風景も、そんな雲の存在がとても大きな絶景でした。

この日は雨が降ったり止んだりのとても不安定な天候の日であったのですが、十五時頃に十数分程度、太陽の光が差し込むような時間がありました。ちょうど、世界遺産にもなっている由緒ある神社に居たこともあり、劇的な景色の変化にちょっと感動を覚えたのですが、しばらくするとまた雨が降り出したりもして「今日はもう天気には恵まれなさそうかも」とあきらめモードに入っていました。そうして幾つかの場所へ足を運んだ後、もう辺りはだいぶ暗くなってはいたのですが、最後に金峰神社へ参拝しようと「大峯奥駈道」方面へ少しだけ足を延ばした時のことです。

ふと右側の木々の上の方を見るとその隙間から空の一部がオレンジ色に染まっているのが見えたのです。

少し早歩きになって、もう少し視界が開けた場所にたどり着いて眺めた景色が写真の光景です。重たく垂れこめる分厚い雲は見たこともないような深い紫色に染まり、所々から光が漏れてきています。手前の山のシルエットはくっきりと浮かび上がり、遠くの山並みはオレンジ色と融合しながら輝いています。それはかつて見たことのない風景。劇的な瞬間は、まさに劇的にやってきます。その美しさ、その神々しい風景は、無神論者でも思わず神の存在を信じてしまうような素晴らしいものでした。

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