妙見宮 西山神社 新年の長崎の風景
異国情緒溢れる町「長崎」。洋館や教会が立ち並び、カステラなどの南蛮由来の菓子を売る店が点在、また中華料理店や中華風の飾り、そして寺院などもあって、横浜、神戸、函館と並ぶ「ハイカラ」な風情に満ちた魅力的な都市です。これらの港町に共通するものとして、「坂の多い街」というのが知られます。いずれの都市も細い路地と坂道が入り組み、高い所から見下ろすと「港町」特有の開放感のある美しい景観を目にすることが出来るのです。
中でも長崎は坂道、それも細い路地が入り組み、坂道や階段になっている場所も多く、たまに訪れる旅行者でも難儀な思いをする場合があるくらいなので、地元の方々はさぞや日々大変な思いをしてらっしゃることだろうと思ってしまう程の傾斜のある地形です。
そんな長崎の入り組んだ細い路地をあても無くフラフラと1人散策していた大晦日の夜のこと。あと少しで年が明けるという時刻になる頃、階段を上ったその先に、何やら鳥居と神社らしき建物があるのがふと目に入りました。
なんとなく心惹かれて階段を上り、神社に参拝後、左側にある建物の方へ歩み寄ると「よかったら上がって下さい」といった感じで声をかけられました。
「通りすがりなので」と断ろうとすると重ねて「どうぞどうぞ」と柔和な笑顔で招かれました。続けて「何もありませんがお茶でも」と。恐縮しながら「ではありがたく」と言うと、「こちらへ」と招き入れられました。
時間が早すぎるのか遅すぎるのか全く判別はつきませんが部屋の中に他に人はいません。部屋をぐるりと見渡していると程なくお茶とお茶菓子が運ばれてきました。可愛らしい2色の干菓子と薄茶です。
温かなお茶とお茶菓子が冷えた身体に沁みていきます。上品な味わいでお茶もお茶菓子もとても美味しかったのですが、その味よりも、何も考えずに階段をなんとなく上がってきただけなのに、丁重にもてなされる、その嬉しさが胃に沁みていく感じです。
もちろん、寒い夜の街を歩いて冷えた体が温まったのもあるとは思いますが、そのもてなしの気持ちそのものがとても嬉しく、ポカポカと温かな心で帰路に着いたのでした。
元々長崎はとても好きな場所でしたが、この時以来さらに好きな町になりました。
というわけで、2024年が始まります。
今年一年が皆様にとって素晴らしい一年になりますように。