東大寺 正月の奈良の大仏 奈良の正月風景
天候不順などによって飢饉が頻発、天然痘などの疫病がはやり、皇族や貴族らの争いも絶えなかったという奈良時代、大いなる不安が覆う世の中を、仏教の力によって鎮め、国の平和と安定を祈願するために作られたといわれるのが奈良の大仏です。
752年に大仏完成を祝う「開眼法要」が行われたといいますから、実に1300年近くに渡って奈良の地から日本の歴史を見続けてきたことになります。実際には戦乱などで幾度も燃え、大仏を覆う建物である「大仏殿」が焼失して、現在の鎌倉の大仏のように覆屋がなく雨ざらしになっていた期間もあるなど、大仏そのものも受難の歴史がありますが、それ以上に世の中は、平安時代、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代~戦国時代を経て、江戸時代、そして明治、大正、昭和、平成、令和と長い年月を経る中で、途中途中に平和で安定した時代が少しあったとはいえ、天変地異、戦乱、疫病など、世の中を覆う不安は姿や形を変え常にすぐそばにあったのかもしれません。
そんな中で、今ほど科学や医学が発達していなかった昔の人々は、やはり祈ることに大きな意味を見出していたような気がするのです。そして、奈良時代などと比べると科学がいくら発達したとはいえ、結局は明日のことも良く分かっていない今の私たちにとってもそれは同じことであり、人間の力ではどうにもならない大きな災害などが起きるにつけ、科学的な見地や、正確な情報、準備・対策などの必要性と共に、やはり私達人間の心の持ちよう、人間としての在り様もとても大切であると思わされます。宗教的な意義、意味合いはそれぞれ異なるとしても、謙虚な気持ちで祈り、感謝するということは、科学が発達している現代だからこそ、改めて大切なことなのかもしれません。
今日の写真は正月の奈良の大仏の風景です。人が年を取ってこの世から去っていくのは仕方のないこととしても、それ以外の悲しみや苦しみがこの世の中から少しでもなくなってほしいと子供のような気持ちで心から願います。